前回までの記事では、「思い立った旅の始まり」と「本州を縦断する鉄道の時間」について書いてきました。
第3回は、いよいよ“北海道に足を踏み入れてから、稚内へ向かう道中”です。
ただ距離を移動しているだけなのに、なぜか心の奥が少しずつ整っていく――
そんな感覚が、はっきりと自覚できた区間でした。
北海道に入った瞬間、空気が変わった
新函館北斗駅に降り立った瞬間、「寒い」というよりも、まず感じたのは空気の密度の違いでした。
同じ日本なのに、音が少なく、風が澄んでいて、時間の流れが一段ゆっくりしている。
これは、山で標高を上げていったときに感じる感覚に少し似ています。
景色が変わる前に、まず身体の内側が反応するあの感じです。
列車に揺られながら、何もしない時間を許す
函館から札幌、そしてさらに北へ。
車窓に流れていくのは、広い大地と、整いすぎていない町並み。
スマホを見る時間は自然と減り、代わりに「ただ外を見る」時間が増えていきました。
何かを考えようとしているわけでもなく、かといって、何も考えていないわけでもない。
登山中で言えば、登りでも下りでもない、水平移動の区間のような感覚です。
人は、こういう時間を意識的に作らないと、なかなか持てないのかもしれません。
「最北端」を目指しているはずなのに、競争がない
今回の旅の目的地は「稚内」。
日本最北端という、わかりやすいゴールがあります。
でも不思議なことに、「早く着きたい」「到達したい」という気持ちは、ほとんど湧きませんでした。
それは、この旅が誰かと比べる旅でも、結果を求める旅でもなかったからだと思います。
山でも同じですが、「登頂」が目的になった瞬間、“景色は急に色あせます。”
今回の鉄道旅は、“どこまで行ったか”よりも“どういう時間を過ごしたか”の方が、はるかに大切でした。
稚内が近づくにつれ、心が軽くなっていく
北へ進むほど、駅の数は減り、車内は静かになっていきます。
何かを足しているわけではないのに、余計なものが、ひとつずつ削ぎ落とされていく感じ。
「頑張らなきゃいけない」
「ちゃんとしなきゃいけない」
そんな無意識の緊張が、いつの間にか、ふっと緩んでいました。
この旅が、登山ツアーと無関係ではない理由
この北海道・鉄道旅を通して改めて感じたのは、人が本来のリズムを取り戻すには、移動そのものが必要だということです。
それは必ずしも山でなくてもいい。
でも、
-
自分の足(または身体)で進むこと
-
時間をコントロールしすぎないこと
-
目的よりも過程を味わうこと
この3つが揃うと、人は驚くほど自然に整っていきます。
私たちが行っている登山ツアーも、本質的には、同じ場所を目指しています。
次回、第4回はいよいよ
「稚内の地に立つことができたのか」と、この旅の“静かな核心”について書く予定です。
派手な出来事はありません。
でも、だからこそ大切な時間でした。
また、続けて読んでいただけたら嬉しいです。
※冬の北海道旅では、寒さによる体力低下=判断力の低下を痛感しました。
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