2026年1月18日日曜日

稚内を目指した冬の北海道旅 〜北へ向かうほど、心が静かになっていく〜(第3回)


前回までの記事では、「思い立った旅の始まり」と「本州を縦断する鉄道の時間」について書いてきました。

第3回は、いよいよ“北海道に足を踏み入れてから、稚内へ向かう道中”です。


ただ距離を移動しているだけなのに、なぜか心の奥が少しずつ整っていく――
そんな感覚が、はっきりと自覚できた区間でした。


北海道に入った瞬間、空気が変わった

新函館北斗駅に降り立った瞬間、「寒い」というよりも、まず感じたのは空気の密度の違いでした。

同じ日本なのに、音が少なく、風が澄んでいて、時間の流れが一段ゆっくりしている。

これは、山で標高を上げていったときに感じる感覚に少し似ています。

景色が変わる前に、まず身体の内側が反応するあの感じです。


列車に揺られながら、何もしない時間を許す

函館から札幌、そしてさらに北へ。

車窓に流れていくのは、広い大地と、整いすぎていない町並み。

スマホを見る時間は自然と減り、代わりに「ただ外を見る」時間が増えていきました。

何かを考えようとしているわけでもなく、かといって、何も考えていないわけでもない。

登山中で言えば、登りでも下りでもない、水平移動の区間のような感覚です。

人は、こういう時間を意識的に作らないと、なかなか持てないのかもしれません。

(特急北斗の車窓より海を望む)



「最北端」を目指しているはずなのに、競争がない

今回の旅の目的地は「稚内」。

日本最北端という、わかりやすいゴールがあります。

でも不思議なことに、「早く着きたい」「到達したい」という気持ちは、ほとんど湧きませんでした。

それは、この旅が誰かと比べる旅でも、結果を求める旅でもなかったからだと思います。

山でも同じですが、「登頂」が目的になった瞬間、景色は急に色あせます。

今回の鉄道旅は、“どこまで行ったか”よりも“どういう時間を過ごしたか”の方が、はるかに大切でした。

(特急カムイにて札幌より旭川を目指す)


稚内が近づくにつれ、心が軽くなっていく

北へ進むほど、駅の数は減り、車内は静かになっていきます。

何かを足しているわけではないのに、余計なものが、ひとつずつ削ぎ落とされていく感じ。

「頑張らなきゃいけない」
「ちゃんとしなきゃいけない」

そんな無意識の緊張が、いつの間にか、ふっと緩んでいました。

(1日目に降り立った旭川駅にて)


この旅が、登山ツアーと無関係ではない理由

この北海道・鉄道旅を通して改めて感じたのは、人が本来のリズムを取り戻すには、移動そのものが必要だということです。

それは必ずしも山でなくてもいい。

でも、

  • 自分の足(または身体)で進むこと

  • 時間をコントロールしすぎないこと

  • 目的よりも過程を味わうこと

この3つが揃うと、人は驚くほど自然に整っていきます。

私たちが行っている登山ツアーも、本質的には、同じ場所を目指しています。

(北海道初日の晩餐は寿司で)



次回、第4回はいよいよ
「稚内の地に立つことができたのか」と、この旅の“静かな核心”について書く予定です。

派手な出来事はありません。

でも、だからこそ大切な時間でした。

また、続けて読んでいただけたら嬉しいです。


※冬の北海道旅では、寒さによる体力低下=判断力の低下を痛感しました。

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